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香港の国家安全法導入/さらに厳しいトランプの制裁措置

香港の国家安全法導入/さらに厳しいトランプの制裁措置

中国全人代が5月22日開催、張業遂(Zhang Yesui)報道官は、22日の全人代で香港の国家安全法の制定を審議すると発表。
最終日の5月28日、全人代で香港の国家安全法の導入を決定する。
1984年、イギリスと中国は、一国二制度の下に香港が1997年に中国に返還されることで合意した。
中国に返還された後の香港は、50年間独立した自治が維持されることになった。
つまり中国は2047年まで一国二制度を順守することが、国際公約としての約束事であった。
中国による国家安全法の制定は、英中共同声明で定められた公約に違反する行為となる。
これに対して、アメリカは中国に強力な制裁措置を講じることを報じている。
一国二制度が崩壊すれば、香港の金融、貿易、投資における優遇措置が消滅して、中国と同じ扱いとなる可能性が高まる。
昨年の香港区議会選挙では民主党の圧勝となり、2020年9月の香港立法会選挙でも民主党優勢が予想されるなか、中国は危機感を持っていた。
コロナ被害で世界から孤立を深める中国は、追い詰められてなりふり構わぬ暴挙へ走った。
国家安全法の導入は、香港の自治が認められなくなるだけでなく、中国による香港への侵略行為に等しく香港の国際都市としての機能が消滅する。

■国家安全法

第1、中国からの離脱・独立を目指す分離独立行為。
第2、中央政府の権力もしくは権威の弱体化を意図する反政府行為。
第3、他人への暴力や脅迫を仕掛けるテロ行為。
第4、外国勢力との結託。

■国家安全法導入の背景

米中貿易戦争の始まりから中国は何とか合意に持っていくことを試みたが、アメリカには最初から合意する意思はなかったように思える。
中国はじりじりと追い込まれるなかで、打開策を見出すことができず、そこにコロナ騒動が始まった。
コロナによって米中関係は貿易問題を飛び越えて、修復不能な国家間の対立構造を生み出す結果となる。
周政権には、アメリカだけでなく国内の対立勢力からも圧力がかかっていたと推測できる。
相対する問題を同時に解決することは出来ず、先の見えない外交よりも国内問題を優先せざるを得ない。
これまで国家安全法が導入されていなくても、香港の自治は中国によって侵害されてきた。
中国による香港のデモ活動の鎮圧、逮捕などは、国家安全法による反政府運動の取り締まり行為に当たる。
世界中から非難されるのを覚悟で国家安全法を進めるのは、9月の香港律法会選挙に対する事前対策だ。
香港律法会選挙では、反中国の民主党優勢が予想され、香港の中国離れが加速することに対する警戒感の現れと言える。
香港には多くの外国人が在留する国際都市であるが、ここで暴動や独立運動が起これば中国にとって大問題となる。
香港の問題は香港だけに留まらず、ウィグル、チベット、モンゴル、他の地域に波及する危険をはらんでいる。

■人民元安と外貨流出

香港国家安全法は香港だけでなく中国にとってもマイナスに作用する。
元々信用リスクの高い人民元のリスクがさらに高まり、人民元の下落が始まっている。
アメリカの制裁措置が出てくれば、さらに下落する可能性が高くなり、暴落に向かうことも考えられるだろう。
香港や中国の富裕層は、香港ドルや人民元を保有するリスクを避けて、外国への脱出も視野に入り、外貨流出が始まっている。
さらに中国の保有するドルは、アメリカの制裁措置によっては塩漬けにされることも考えられる。
今後の中国は外貨獲得の機会が減少し外貨不足が懸念されてくる。
香港国家安全法は香港の外貨獲得を狙ったものという背景も指摘されている。
またインフレが進んでいる中国では、人民元の下落によってさらにインフレが加速して、人々の生活は困窮を極めることになるだろう。
人民元の価値を維持するためにも多くの外貨が必要となる。

■中国、香港離れの加速

中国は輸出依存度の高い国で内需は決して強いとは言えないが、アメリカの金融制裁によって、中国で作ったものが売れなくなることが予想される。
すでに外資の中国離れが始まっているが、外資だけでなく中国企業の間でも中国離れが始まっている。
中国離れは中国の空洞化が始まる前兆だ。
アメリカや日本では、中国から撤退する企業に対して支援策を講じている。
輸出だよりの中国は外貨を稼ぐ手段が減少していくのは明らか、食料自給率の低い中国は食料を輸入に依存しているが、外貨がなければ食料不足となることは必然だ。
2020年の中国は失業者が溢れかえり、人口の多さが経済に与える影響はプラスにはならず、大きなマイナス要因となるだろう。

●オフィスの空室率が高水準
香港の空室となったオフィスは、昨年7月から12月に64万6000㎡、今年1月から6月に94万9000㎡とおよそ1.5倍に増加した。
4月から6月は57万7000㎡、このうち60%以上が外国企業で、国家安全法の影響のよって香港離れが加速していると見られる。

■国家安全法の適用範囲

香港国家安全法は解釈しだいで中国が犯罪とみなせば、国籍に関係なく、どこの国の誰でも、犯罪者と認定される可能性がある。
すでに香港では民主化を支持する人々が大勢拘束され、なかにはビラを持っているだけでも高速されている。
香港と犯罪人引渡条約を結んでいる国であれば、香港と同様に犯罪者として高速され、香港や中国へ引き渡される可能性がある。

中国と犯罪者引渡条約を結んでいる国
フランス、スペイン、イタリア、イラン、インドネシア、南アフリカ、ラオス、ロシア、ブラジル、韓国、モングル、ルーマニア

香港と犯罪者引渡条約を結んでいる国
英国、米国、ドイツ、インドネシア、韓国、フィンランド、インド、アイルランド、マレーシア、オランダ、フィリピン、ポルトガル、シンガポール、スリランカ、チェコ
英国、米国、インドは中国と敵対国ですから引き渡されることはないでしょう。
しかし香港にいる英国、米国、インド、オーストラリア、日本などの人は常に危険に晒されることになると考えるべきでしょう。

■アメリカの制裁措置

◆香港自治法による制裁対象

●香港の自治を侵害する香港や中国当局者及びその家族
米国ビザの発給停止
米国資産の凍結
銀行口座の停止
●制裁対象と取引のある金融機関
米ドル決済(SWIFT)の利用停止

香港政府最高責任者の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官
保安局長の李家超(ジョン・リー)
律政司長の鄭若驊(テレサ・チェン)
政制・内地事務局長の曽国衛(エリック・ツァン)
香港警務処長の鄧炳強(クリス・タン)
前任の盧偉聰(ステファン・ロー)
国家安全法により新設された国家安全維持公署の鄭雁雄署長など11人が制裁対象となる。

■時系列記事

5月22日、米商務省は、ウィグル人権侵害に関与した疑いで中国企業33社をブラックリストへ乗せた。
5月27日、ポンペオ国務長官は、香港の自治が既に失われていることを議会に報告した。
この時点で香港の貿易優遇措置の撤廃が決まった。
さらにウイグル人権法が上院、下院で可決。

5月29日、トランプ大統領は、アメリカのコロナによる犠牲者が10万を越えたこと、香港国家安全法は、国際公約違反であることを理由として、中国への制裁措置を発表した。
●香港の優遇措置(香港政策法)を撤廃
制裁関税適用、香港政府高官のビザ停止、また制裁措置として資産凍結
●WHOからの離脱
WHOは中国の管理下にあるとしてアメリカはWHOを離脱、拠出金5億ドルは他の保険機関へ振り向ける方針。
WHOは最大の拠出金を出しているアメリカを失うことになる。
●中国人のビザ停止
現在アメリカにいる中国人留学生のうち、国家安全保障上のリスクとなる約3000人について、ビザの発給を停止する。
追加制裁措置として、中国の銀行に対してSWIFTの利用を停止することが、議会から提出され検討に入った模様。

6月26日、ポンペオ国務長官は香港の自治を侵害した共産党員などにビザの発給制限を行うと発表した。
香港国家安全法に関わる制裁措置の発動はこれが初めてとなるが、いかにも小出しに出している感は否めない。

7月1日、時事通信発表
マイク・ポンペオ米国務長官は、香港国家安全法の導入への制裁措置として、中国共産党員などにビザ発給制限、重要防衛技術の輸出制限を発表した。
さらに関税引き上げ、香港ドルから米ドルへの交換制限など、これまで香港に認めてきた優遇措置のほとんどが撤廃される見込み。

7月14日、香港自治法案(Hong Kong Autonomy ACT)
トランプ大統領は香港自治法案へ署名、これまでの香港への優遇措置が撤廃されて、中国と同じ扱いとなる。
香港市民を弾圧する中国や香港当局者および当局者と取引のある銀行に制裁が科される。
すでにキャリー・ラムを始めとする11人が制裁対象者として名前が上がっている。
銀行に対しては米ドル取引が禁止となり国際金融市場からの撤退を余儀なくされる。
香港の格付けが中国並みに低下して国際金融、国際貿易の地位を失う。
なお香港の米ドルペッグ制に打撃を与える制裁措置も検討していたが、米国への影響を考慮して取り下げる見通しとなった。
結局米国は、米ドルペッグ制に踏み込んだ制裁措置を講じることは出来なかった。
米国系企業が香港から撤退していかないと、米ドルペッグ制を廃止できないということになるが、優遇措置がなくなれば、今後香港から撤退する企業が増えていくと見られる。
●米国への入国禁止
中国共産党員9200万人とその家族、人民解放軍、国営企業の幹部、在米中国人のビザ取り消し
米国だけでなく、英国、EU、日本、豪州も米国に従う可能性がある。

8月10日、香港の著名な民主活動家アグネス・チョウ(周庭)と香港紙アップルデイリー創業者のジミー・ライ(黎智英)が逮捕と報道された。
アグネス・チョウの逮捕には、日本からも抗議のツウィートが数多く寄せられた。
ジミー・ライも香港民主活動の中心的な人物で、逮捕の報道から深夜に発行されたアップルデイリーを購入するため大勢の人が列をなし55万部(通常の約8倍)の売上を達成した。
さらにアップルデイリーの親会社ネクストデジタルの株価が1150%も上昇となった。
罪名は不明で11日には釈放されているので、警告を目的としたものかも知れないが、あまりの反響の大きさに釈放を余儀なくされたともされている。

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