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インディ500観戦記2021勝負師琢磨の大博打炸裂

インディ500観戦記2021勝負師琢磨の大博打炸裂

インディカーシリーズ最大のイベント、第105回インディ500マイルレースが5月30日(日)インディアナポリス・モータースピードウェイで開催されました。
昨年優勝した琢磨選手は連覇と3度目の優勝がかかっています。
コロナの影響で昨年は無観客レースとして開催されましたが、制限はあるものの今年は13万5戦人が観戦するなかでのレースとなります。
勝負どころの残り50周を切ったあたりで、琢磨選手が掟破りの奇策を打って度肝を抜かれました。
レース終盤には誰も思いも描けないどんでん返しが待っていました。
レース前恒例のドライバー紹介では、ひときわ大きな歓声を浴びたのは昨年優勝の琢磨選手でした。
ここから今年のインディ500を振り返ってみました。

■オープニング~50周目

レースは1周2.5マイルのコースを200周、全長500マイルを走破して決着が付く、周回コースでは世界最速のレースとなる。
オープニンググリッドは、1番ディクソン、2番ハータ、3番ビーケイ、4番カーペンター、5番カナーンの順、琢磨は15番からのスタートとなる。
理想的とは言えないものの中段より少し前の位置で、終盤に勝負を懸ける琢磨にとって決して悪い位置ではない。

いよいよ世界で一番面白いモータースポーツ、インディ500のグリーンフラッグが切って落とされた。
オープニングラップ第3コーナーでいきなりディクソンをオーバーテイクしてハータが首位に立つと、3周目にはビーケイが首位、序盤から激しい首位争いの攻防が始まった。
この間に15番手の琢磨は13番手に浮上、僅かながら順位を上げている。

流れが落ち着いた32周目、各車最初のピットインが始まる。
ビーケイが最初のピットへ向かうとハンターレイもこれに続き、各車ピットへ向かうなかカーペンターがピットアウトでエンジンストール、順位を大きく下げた。
今度は34周目にハータがピットへ向かった直後、ウィルソンがピットレーンでクラッシュしてリタイア、最初のイエローとなった。

イエローによってピットクローズとなる中、ディクソンとロッシが燃料切れとなり、燃料補給の後エンジンがかからず大きなロスタイムでラップダウンに転落した。
ここでイエロー巧者の琢磨が混乱する中を流れに乗って8位に浮上、首位はハータこれにビーケイとデイリーが続いて周回をこなしていく。

レースは47周目にリスタートとなり、直後に琢磨がさらに2台をパスして6位に浮上、うまく流れに乗れて申し分ない展開だ。
琢磨は一度のイエローで13位から6位に浮上、まさにイエローの魔術師と呼ぶに相応しい離れ業を披露した。
50周目にビーケイとデイリーがハータをパスして首位がデイリーに代わった。

■51周目~100周目

69周目にビーケイが2度目のピットイン、72周目にデイリーが続き、ここでカストロネベスがラップリーダーとなり暫定首位に着いた。
78周目にハータ、カストロネベスがピットイン、琢磨は80周目にピットへ向かった。

各車2度目のピットインが終わった段階で、首位ビーケイに続いてデイリー、ハータ、パロウの順、琢磨は9位に下がったが特に問題はない。
84周目にデイリーがビーケイを交して再び首位に立った。
レース半分の100周目を終えて、ここまで落ち着いた展開で周回を消化している。

■101周目~150周目

いよいよ後半戦に突入
119周目に先頭集団の最後にピットインしたレイホールが、ピットアウト直後に左タイヤが外れてクラッシュした。
これで2度目のイエローとなり、いい位置にいたレイホールはリタイアとなった。
今大会はやたらとピットでのトラブルが多い。

首位にパロウ、続いてカストロネベス、オワード、ビーケイ、ニューガーデンの順、琢磨は7位。
イエローによってラップダウンのディクソンがリードラップに戻ってきた。

レースは126周目に再スタート、ここで首位攻防戦が展開されパロウをパスしてカストロネベスが首位、さらに3位からオワードが首位に立つが、再びパロウが抜き返して首位に着いた。
オワードは、無理せず3位に引いて流れが落ち着く。
148周目、首位はパロウ、続いてカストロネベス、オワード、首位グループが4度目のピットへ向かうと、152周目に琢磨がラップリーダーとなり暫定首位に着いた。

■151周目~ゴール

いよいよラスト50周を切り、大詰めに向けてミスが許されない状況だ。
暫定首位の琢磨は、快調な走行で157周目に4度目のビットイン、ビーケイの後ろでコースに復帰した。
首位はパロウ、続いてカストロネベス、オワード、ハンターレイ、ビーケイの順、ここから琢磨はずるずると下がりだして11位に後退した。

何が起きたのかわからなかったが、燃費走行で4ストップ作戦に切り替えたようだ。
残り40周で6位、正攻法で勝負しても勝算のある位置にいる状況で、勝負師琢磨が大博打に打って出た。
琢磨は更に順位を下げて18位あたりまで下がっていく。

169周目、カストロネベスがパロウをパスして首位に立つと、172周目に最後のピットへ向かい、続く173周目にはパロウがピットへ向かった。
先頭集団がピットの間、後方の琢磨が順位を上げ、首位ローゼンクヴィストの後ろに着いた。
この時点では琢磨の首位は時間の問題、理想的な展開と思ってみていた。

残り20周、カストロネベスとパロウが抜きつ抜かれつの激しいバトル、その17秒前を琢磨が行く。
192周を回って首位を走行していたローゼンクヴィストがピットへ向かい、再び琢磨が首位に着いた。

残り7周で首位に立った琢磨、これで琢磨の優勝が決まったと確信した瞬間だ。
しかし6周を残して琢磨も静かにピットへ向かっていく。
何が起きたのか状況がまったくわかっていなかったが燃料切れであった。
ゴールまで燃料は持つと思っていたが、燃料切れになることは最初からわかっていたわけだ。

燃費走行で4ストップ作戦は、ゴールまで燃料が持つという前提ではなく、イエロー頼みの作戦であったことを後で知った。
琢磨はチームの指示に従っただけで、レース後のインタビューでは、チームの指示に不満を語っている。
5ストップで思いっきり勝負に臨みたかったということだ。

結果論とは言え余りに無謀な作戦とも思えるが、首位に立った時点でイエローとなれば、琢磨の優勝が現実になったわけだ。
さらにレイホールがリタイアしていなければ、反則技を駆使して琢磨を優勝させることも出来たわけだ。
しかし、コース上には琢磨だけ、レイホールが優勝に絡んでいれば、面白い作戦だったかもしれないが、琢磨が首位に立ったのは1周だけで、ここでタイミング良く誰かが事故ってイエローになるなど、確率が低すぎる無謀な作戦と言わざるを得ない。

状況がわかっていなかったため冷静に観戦できずかえって面白かったが、状況を知っていたら興ざめだった。
琢磨は、いいレースをしていただけに正攻法で戦わせてやりたかった。
なによりも琢磨にとって納得のいかないレースになってしまった。
結果は14位、優勝できたかはわからないが、終盤まで流れに乗っていい展開だったので、琢磨の最後の追い込みが見られなかったのは残念だった。

優勝争いのほうは最後にカストロネベスがパロウに競り勝って4度目の優勝を勝ち取っている。
今年はここまで若手ドライバーの活躍が目立っていたため昨年デビュー組が怖いと思っていたが、パロウ、オワード、ビーケイの3人の活躍が目立っていた。
結果はカストロネベスのこれまでの実績と経験が1歩まさったレースとなった。
序盤でトラブルのあったため、終わったと思っていたカーペンターが良く頑張った。

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